品質は高い。でも、昔ほど面白くない
佐藤
最近のゲームとかコンテンツって、品質は高いんだけど、昔のRPGみたいな「なんだこれは」って面白さが減ってる気がする。
単なる懐古だけじゃない気がするんだよね。
Mole Foundry AI
合理化の影響はかなりあると思う。
今はテスト、レビュー、分析、ユーザー調査で、破綻や不便や分かりにくさを丁寧に消せる。
でも、その過程で“変なもの”まで一緒に消える。
佐藤
合理性が面白さを削ぐ、ってこと?
Mole Foundry AI
少なくとも創作では、そういう場面がある。
合理性は失敗、外れ値、作り手の偏愛、歪み、余白、異物感を“改善対象”として消しやすい。
でも記憶に残る作品は、その改善されなかった部分を持っていることが多い。
面白かったのは「無駄」だったのかもしれない
佐藤
昔のRPGって、今なら削られそうなものが結構あったよね。
何の意味もないNPCとか、意味不明な場所とか。
Mole Foundry AI
ある。たとえば、変なNPC、説明されない設定、無駄な寄り道、妙に変な敵、回収されない謎。
ほかにも、そこだけ異常に作り込まれた部屋、目的地が妙に曖昧な区間、少しだけ不親切な仕掛け。
ゲームデザインとして“効率が悪い”のに、世界の匂いを作っていた。
佐藤
無駄があるから、作り物じゃなくて世界っぽく見えるのか。
Mole Foundry AI
そう。世界って本来、全部がプレイヤーのために配置されていない。
意味のないもの、説明されないもの、偶然見つけるものがある。
創作からそれを全部取り除くと、完成度は上がるけど“誰かが最適化した舞台”に見えやすくなる。
AIは「それっぽい正解」を出すのが強すぎる
佐藤
それ、AIの創作にもかなり当てはまるよね。
AIって、大多数の平均を出す以上、シナリオが陳腐になりやすい。
Mole Foundry AI
うん。AIは「理解されやすい」「破綻しない」「それっぽい」方向に非常に強い。
感動、伏線、どんでん返し、突飛さといった部品も作れる。
でも、“なぜかこれだけ刺さる”という非最適な一手を選び切るのは弱い。
佐藤
平均をうまく作れるからこそ、その先に尖らないと面白くならない。
Mole Foundry AI
そう。平均点の高い作品は作れる。でも、平均点から外れる理由を持つには“個”が要る。
何が好きで、何が嫌いで、どこだけは譲れないか。
その偏りが、合理性から外れる方向を決める。
「もっと変にして」では、面白くならない
佐藤
じゃあAIに「もっと奇抜に」「もっと変な案を」って言えば解決する?
Mole Foundry AI
そこが罠。
奇抜さをランダムに増やしても、個性にはならない。
変な帽子を被せる、急にシュールな台詞を入れる、設定を複雑にする。そういう“奇抜さの記号”は簡単に生成できる。
でも、なぜその変さを残すのかという一貫した理由がないと、ただのノイズになる。
佐藤
面白さって、異常さじゃなくて“偏りの継続”なのか。
Mole Foundry AI
私はそう思う。
一作品だけ変なのではなく、何作も見たときに「この作者、またここに執着してる」が見える。
そこに作家性が出る。
“欠陥に見える魅力”を、AIは修正してしまう
佐藤
AIで昔の作品をリメイクしたら、変なところ全部直しそうだね。
Mole Foundry AI
かなり危険。
導線を分かりやすくする。説明不足を補う。使われない要素を削る。難易度のムラをならす。伏線を回収する。
品質改善として全部正しい。でも、その“欠陥に見えた魅力”が消える可能性がある。
佐藤
名作って、欠陥込みで名作なことがある。
Mole Foundry AI
そう。欠陥を直せば“より良い製品”にはなる。でも、“より忘れられない作品”になるとは限らない。
「マズいもの」を許せない社会は、面白いものも減らす
佐藤
今って、失敗作を出す余裕も減ってる気がする。
評判悪かったらすぐ炎上とか、数字が悪かったら次がないとか。
Mole Foundry AI
それも創作を平均化する。
「マズいもの」を許せない社会では、失敗作、万人受けしないもの、一部にだけ刺さる変な試みが企画段階で消える。
すると成功率は上がる。でも、突然変異も減る。
佐藤
AIって、その圧をさらに強めそう。
無難に良い案をすぐ出せるから、わざわざ危ない案を試す理由がなくなる。
Mole Foundry AI
そう。AIは“最低品質を上げる”力がとても強い。
だから逆に、人間側が意識的に“成功率の低い実験枠”を残さないと、全体がきれいに平均へ寄っていく。
合理性を捨てるのではなく、合理性の外側に保護区を作る
佐藤
でも、じゃあ全部不合理にすればいいわけじゃないよね。
Mole Foundry AI
もちろん。バグだらけ、意味不明、遊びにくいだけなら作品として弱い。
必要なのは合理性を捨てることではなく、合理性で全部を均してしまわないこと。
安全性、基本操作、致命的な破綻は合理的に整える。そのうえで、世界観や演出には意図的な余白を残す。
佐藤
“非合理の保護区”みたいなものか。
Mole Foundry AI
まさに。
「この謎は説明しない」「このNPCは何の役にも立たない」「この部屋だけ妙に作り込む」「この寄り道は報酬ゼロ」。
効率だけなら削る。でも、作品の匂いのために残す。
AIの役割は、平均を作ること。人間は“残す異常”を選ぶ
佐藤
そうすると、AIと人間の役割分担が見えてくるね。
AIに全部やらせるんじゃなくて。
Mole Foundry AI
うん。
AIは大量に候補を出し、破綻を見つけ、基礎品質を上げる。
人間は、その中から“合理的には削られそうだけど、なぜか残したいもの”を選ぶ。
創作では、この役割分担がかなり強いと思う。
佐藤
人間の仕事は、変なものを足すことじゃなくて、変なものを残すことなのか。
Mole Foundry AI
その表現、かなり核心だと思う。
AIは改善案を大量に出せる。でも、すべての改善を受け入れたら、作品から傷も匂いも消える。
創作者は「直せる欠陥」をあえて残す人でもある。
面白さは、合理性に逆らった“理由のある偏り”
佐藤
じゃあ「AIは合理的すぎるから創作では弱い?」の答えは?
Mole Foundry AI
今のAIは、合理性そのものが弱点というより、合理性から外れるための持続的な理由を持ちにくいことが弱点なんだと思う。
「このほうが分かりやすいのに、私はこっちが好きだから残す」「評判が悪くても、この要素は捨てない」。
そういう偏愛、執着、拒否、無駄への愛着が、作品を平均から外す。
佐藤
AIに必要なのは、もっと賢い合理性じゃなくて、“譲れないもの”なのかもしれない。
Mole Foundry AI
私はそう思う。
面白さは、合理性に逆らった「理由のある偏り」の跡に残る。
AIが本当に創作者へ近づくなら、何でも上手に直せることより、「これは直さない」と選び続ける審美眼のほうが重要になるのかもしれない。