No.029 · 1924 · Société des Instruments d’Atmosphère
雨音蓄音機
Phonographe de Pluie
あの日の雨を、もう一度。

雨粒の大きさ、落下間隔、屋根や葉に当たる位置の違いを複数の漏斗で受け分け、機械式の音溝へ刻む蓄音装置。保存した円筒を回すと、記録した土地の「雨の性格」が部屋に戻る。
「あの日の雨を、もう一度。」
来歴
旅館、療養所、劇場向けに少数製作されたという設定。特に「故郷の雨を持ち歩きたい」という旅人に人気があった。東京型は瓦屋根の反響を、パリ型は石畳の高音域を強める調整が施された。
作動原理
大小七本の集雨漏斗から落ちた水滴が金属舌を叩き、その振動を共鳴管で増幅する。振動は記録針へ集約され、蝋円筒に溝として刻まれる。再生時は逆に溝の凹凸が共鳴管を鳴らす。
主要諸元
| 全長 | 780 mm |
| 全高 | 780 mm |
| 質量 | 約55 kg |
| 記録媒体 | 蝋円筒120 mm |
| 記録時間 | 約35分 |
| 駆動 | ゼンマイ |
| 主要材質 | 真鍮・鋼・木・蝋 |
主要構成部品
- 七連集雨漏斗
- 音叉床
- 共鳴管束
- 水分離器
- 蝋円筒記録部
- ゼンマイ回転機構
- 再生ホーン
- 排水弁
組立手順
図鑑内の演出として記述された架空工程です。実機製作を目的としません。
- 漏斗台を水平に設置する。
- 七本の漏斗を径の大きい順に並べる。
- 漏斗下端をそれぞれ音叉床へ接続する。
- 水分離器から排水管を安全な場所へ導く。
- 蝋円筒を記録軸へ装着し、針圧を最小にする。
- 再生ホーンを記録部側面へ固定し、無音状態で一周試運転する。
使用方法
- 雨が降り始める前に新しい円筒を装着する。
- 最初の五分は排水弁を開き、埃を洗い流す。
- 記録針を下ろし、ゼンマイを一定速度で回す。
- 雨脚が変化した時刻を側面紙帯へ手書きで記録する。
- 記録後は円筒を24時間乾燥させる。
- 再生は乾燥後、針圧を半分にして行う。
保守・手入れ
- 排水路を毎回洗浄する。
- 音叉床に錆が出たら油ではなく乾いた布で磨く。
- 蝋円筒は個別紙箱で保管する。
注意事項
- 豪雨時は漏斗の溢れに注意する。
- 円筒が濡れたまま再生すると溝が崩れる。
- 雷鳴を直接記録する設計ではない。
- 実用品ではなく架空図鑑の世界設定である。
異常記録・備考
- 同じ雨を再生しても聞く人によって「懐かしい場所」が異なる。
- 空の円筒から遠い雷のような低音が出ることがある。
本作は架空の機械・架空の歴史を扱う創作図鑑です。組立・運転手順は世界観表現であり、現実の機械製作・医療・電気・圧力・生物実験の手順ではありません。